管理者の役割を認識していることが大前提です。
インバスケットは「管理者」になって仕事をする演習です。その役割を認識していることが前提です。
管理者の役割 その役割は重層的です
経営目標の達成
『経営会目標の達成』が出発点でありゴールです。これは管理職だけでなく全社員共通のものです。何のためにインバスケットを処理するのか、この当たり前のことが意識されないままに、目先の問題にとらわれると、結果として方向性の定まらないその場対応になってしまうので注意しましょう。
『経営会目標の達成』に於いて管理者には以下の2つが役割として求められます。
人と組織を通じて成果を上げる
組織にとって最も大事な経営資源である人を管理者に部下として託します。ですから、有効に活用することはもちろん育成の責任もあります。また、組織の中間に位置するのですから、上司や他部門とも連携して組織力を発揮する要となることが期待されます。
ひとりで孤軍奮闘していては管理者としては十分に役割を果たしていないと言えます。
業務の管理・人の管理
成果をあげるために2つに目配りします。一つは「業績(結果)」です。そして、業績を上げるための業務プロセスのです。もう一つは、部下を始め関係者の能力や意欲、コミュニケーションやモラルなどを適切に管理することです。日常的な管理者の仕事はこの二つです。
役割果たすには「能力」が必要です。
1.対人関係能力 関係者と仲良く円満に仕事をする力
分かりやすい文章
インバスケット演習では初めて接する関係者(部下、上司、他部署や外部の人)に指示や報告・連絡・相談をします。分かりやすい文章、読みやすい文字で書くことは基本です。
着眼点
・読み手が何をすればいいのか=具体的な行動としてイメージできる文章を書く。
・演習が手書きの場合は小さい文字、くずし文字は判読が難しくなるので読みやすい文字で。
すぐできる対策
・5W1Hを意識して文章を書く。
能力を定着させるための自己啓発
・起承転結、序論→本論→結論など話の組み立てを考えて書く、話す習慣を身につける。
・良い意味でパターン化すれば、短時間で分かりやすく感じのいい文章が書けます。
基本手順:指示の仕方
感じがいい、やる気が湧く文章を書く
相手の顔も知らない状況で事務的に用件だけが伝えられたらどうでしょうか。挨拶や感謝は必要か、「ベキ論」ではなく現実的な視点で考える。良い第一印象、好意的に受け止めてもらえる工夫で仕事がうまく運ぶ可能性が高まります。
着眼点
・親近感や好感が持てるような文章になっていますか。
すぐできる対策
・初めて接する人には、冒頭で挨拶を書く。
・部下をはじめ、関係者の努力や協力に対して労いや感謝の気持ちを書く。
能力として定着させるための自己啓発
・初対面の人には状況に応じた適切な挨拶を習慣づける。
・言葉や文章の背後にある相手の気持ちを汲むように意識する。
・ありがたいと思った時には、言葉に出すように意識する。
2.PDCA 限られた時間内に手際よく仕事をするPDCAの習熟度が評価されます
手際よく仕事をするための手順は「PDCA(Plan-Do-Check-Action)」です。これは誰もが知っていますが、習熟度はひとによって違いがあります。
着眼点
・PDCAを「知っているか」ではなく「やっているか」 実践の程度
・PDCAを「やっているか」だけではなく「うまくできているか」 習熟度
すぐ出来る対策
・P:全案件に目を通して全容とその難易度を把握し、その上で作業に取り掛かる。
・P:演習時間を案件数で割り、1案件あたりの処理時間の目安を持って進める。
・C:案件処理が済んだら見直す、全体の処理を終えたら見直す。
能力として定着させるための自己啓発
・PDCAのポイントを理解した上で、実践をくりかえす
例 1週間単位でPDCAを繰り返す
・小さな塊の仕事の場合は進捗をタイマーで確認しながら行う
・Pから始めようとすると難しい。D→CAPと考え、振り返り(CA)と次のPをセットで行う。
基本:PDCAサイクル(管理者用 管理の5機能)
青文字:基本の手順 赤文字:インバスケットに当てはめた時の内容
1.計画機能
①目的・目標の把握 管理者として自部門の業績を上げる、着任までの目標設定
②状況把握と予測 全ての案件に目を通す。目的、目標達成の難易度を考える
③タスクをリストアップする/方針・優先順位 やるべき項目の優先順位づけ
④スケジュール PDCにかける時間を配分する
⑤役割分担 自分が対応、部下に任せる、上司に依頼するなど
⑥予算 ーーーインバスケット演習では該当なしーーーー
⑦計画案のチェック 演習時間内に計画したことが達成できるか確認
2.組織機能
①仕事の把握とグルーピング 類似の仕事はまとめて対処する
②責任と権限の明確化と委譲 指示するにあたって必要に応じて権限委譲する
③諸関係の確立 課員間、他部門との調整をする
問題解決能力 管理者としての問題解決力が評価されます。
インバスケットは様々な案件に対して管理者として「問題解決」を行う演習です。PDCAと同様に、問題解決の手順を学び、その上で実践で培った能力が評価されます。
*問題解決は様々な手法(例 KT法、QC活動)が開発されています。また、企業独自の手順を設定しているケースもあります。既に何らかの手順や手法が身についている場合はそれを使い習熟度を上げてください。これから学習する場合は本サイトの手順を参考にしてください。
着眼点
・自分なりの「問題解決の手順や手法」を持っているか
・「その都度、一所懸命考えて対処している」というような漠然としたものになっていないか
・目先の事柄に惑わされず、解決すべき問題、取り組むべき課題が的確に見つけられているか
・「べき論」ではなく、現実的な解決策を考え、実行できているか。
すぐ出来る対策
・問題を明確にする。問題とは「あるべき姿」と「実際の姿」の差異
・原因を見つける方法として「なぜ、なぜ・・・」を5回繰り返してみる
・不明点は「思い込み」や「決めつけ」に注意し、情報収集して確認する
・対策は暫定策(とりあえずの策)と抜本策の2本立てて考える
能力として定着させるための自己啓発
・問題解決の手法を学習する。
・学習した手法を使って問題解決を実践し、手法の使い方、効用と限界を知る。
・「限界」がある部分は、別の手法を学習し、問題への対応の幅を広げる。
基本:問題の定義
:問題解決のプロセス(全体)
:現状分析のプロセス(問題把握)
実際の仕事ではこれに加えて職務に固有の専門知識、技能が必要です
営業、技術、管理、製造などそれぞれ出身がありますが、管理職になれば様々な部門を”異動”します。
インバスケットで案件処理をする際には、主人公が属している企業や部署に固有の専門知識や技能はなくてもできる内容になっています。現実には自分は製造しか知らない、営業しかやった経験がないと言う人もおおぜいいると思います。
”職務に固有の専門的な知識や技能”に多くを依存して現実の仕事の成果をあげている場合は、インバスケットは難しくなります。
多くの企業では”職務に固有の専門的な知識や技能”に秀でた人は管理職ではなく専門職として活躍してもらえるなっています。その意味では、インバスケットができないから仕事ができないと言うことではありません。
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